負担増大?応能負担から応益負担への移行による利用者への影響とは

介護サービスの拡充が進む中、介護を受ける高齢者やその家族への負担拡大が問題になっています。

介護保険法が1997年に成立して以降、日本の介護サービス利用は応能負担から応益負担へ移行されました。今までは、それぞれの収入に応じた負担額を納めれば利用できたサービスが、収入額に関係なく一律の利用額を出さないと利用できなくなったのです。

これにより、介護サービスの利用者やその家族の間で、様々な問題が起きていることが指摘されています。

この記事では、応益負担への移行の背景と問題点を紹介します。今後、ますます高齢化が進行すると予想される日本社会において、誰にも関係するテーマです。

 1章 「応益負担」と「応能負担」

介護をするとなると様々なサービスを利用する機会が増えます。家族の負担を軽くするためにも、介護サービスの利用は欠かせないものとなっています。

この介護サービスは、利用する際に家族に大きな金銭的負担がかからないシステムになっていました。それが「応能負担」と呼ばれる制度です。

「応能負担」とは、収入に応じて支払う金額が変わるシステムです。収入が少ない世帯は支払う額が少なく、収入が多い世帯は多くの金額を支払います。

かつて、介護サービスは老人福祉制度と老人保健制度に基づいて行われていました。老人福祉制度では「応能負担」が用いられ、世帯の収入によって支払う利用負担額が異なっていました。

しかし介護保険制度が始まると、「応益負担」が用いられるようになりました。「応益負担」とは、収入の差に変わりなく、皆が同じ金額を支払うというシステムです。サービスを利用する人が利用額の1割(もしくは2割 2015年8月から)を負担するというシステムに変わりました。

従来の応能負担であれば、どのような介護サービスを受けたとしても、収入に応じた負担しか求められなかったため、所得が少ない世帯や重度の介護者がいる家庭でも安心して介護サービスを利用することが可能でした。

「応益負担」に移行したことで所得が多い世帯では負担が減ったのに対し、所得が少ない世帯では介護サービスを受けることが負担になっています。結果としてサービスを受けることができない、受ける回数を減らさざるをえない、という状況が起きています。

 2章 応益負担への移行理由

いったいなぜ、応能負担から応益負担へと移行したのでしょうか。それには、

どんどん進む高齢化や不況が引き起こす財源不足が理由にあります。

日本は多額の赤字財政に悩んでいることは誰もが知っている通りです。その中でも国が頭を抱える問題の一つが、介護に関する財源です。

特に団塊の世代が75歳以上になる2025年には、医療費とともに介護費用が激増することが予想されています。この時に間に合うように、介護サービスを利用した人の満足度を保ちつつ、制度を維持させていかなければなりません。

そのために、今まで負担を軽減されていた低い所得の世帯の利用者にも負担を課すことで、社会保障費を抑制し、財源を確保しようという狙いが背景にあります。

 3章 応益負担へ移行した影響

利用者が支払わなければいけない介護保険制度のサービス利用負担額は、サービス利用額の1割、もしくは2割です。残りの9割~8割は国の財源から出ています。

この1割か2割の負担の違いは、サービスを受ける人の所得によって異なります。65歳以上で年間所得が160万円以上の人は2割負担です。これは所得の上位20%にあたる人の金額が目安になっており、2015年8月より適用されました。

しかし、どれだけサービスを使っても1割か2割負担で良いというわけではありません。介護保険サービス給付限度額までが1割または2割の負担です。給付限度額を超えてしまうと、超えた分は自己負担となります。

そのため費用が高くなる介護サービスを受けることが出来ないというケースや、介護サービスを受ける頻度を減らさなくてはいけないというケースも起こります。

介護サービスを応益負担になると所得に関係なく、利用者は一律の負担を求められます。所得が多い世帯であれば負担は少なくすみますが、少ない所得の世帯では介護サービスを受けること自体が難しくなり、サービスの利用を諦めざるをえない状況が起きています。

しかし、継続的なリハビリや治療が必要な人もいるため、それらの介護サービスを受けることができないことで症状が悪化するなど悪影響が出ることが心配されるのです。

また介護サービスを受けることが出来なくなると、その分の負担を家族が負わなくてはなりません。家族が介護に要する時間が増えるため、家族の精神的・肉体的な負担も増えることは想像に難くありません。

応益負担になったことで、低所得の世帯においては金銭的負担だけではない、想像以上のプレッシャーがかかっているのです。介護が必要な家族のお世話をするなかで精神的に追い詰められ、心中など悲しい事件に発展するケースも後を絶ちません。介護そのものが抱える問題も大きくで、応益負担へ移行したことによりさらに金銭的な悩みを抱える世帯が増えているのです。

また応益負担になることにより、今までは自立しようと頑張っていた要介護者が金銭的な理由から自立を諦めざるをえない状況も起きています。厳しい金銭負担に耐えられず、家族を頼るしかないほか、施設や入院していた方が良い、という自立への促進を妨げてしまうというデメリットがあるのです。

 4章 これからの展望

2016年2月、社会保障審議会介護護憲部会が2年ぶりに開催されました。この際に厚生労働省は制度改正を見据えて、給付見直しや利用者負担などを検討する意向をしめしています。

介護保険の給付額の見直しのほかに、介護サービス利用料についても検討されており、負担額を2割とする人の拡大も考えられています。また介護保険制度が改正されるたびに応能負担について議論がなされています。

これは当然だともいえる流れです。各家庭によって所得には差があります。とくに所得が少ない上に病気を患っている人やその家族に対して、応益負担を求めること自体が非人道的であるとも受け取られています。

また、各種の介護サービスは、それを必要とする人の数に追い付かず、需要と供給のバランスが取れていない状況にあります。介護サービスには民間企業も参入していますので、「需要がもっとあるなら金額を上げよう」という流れになることが当然として予想されます。

このまま応益負担が続くと、金銭的に豊かでなければ介護サービス自体を受けることができない、または高い金額を払わなければ十分な介護を受けることが不可能になる、という状況が起きかねないのです。

もちろん、資産がたくさんあればいくらでも介護サービスの利用に対して料金を支払うことが可能です。ただし、低所得の世帯ではサービスを受けること自体が難しくなります。

ただし、所得が多い世帯からすれば全能負担という制度に不公平さを感じるのも理解できます。その不満を解消するためには、所得の高い世帯が相応の負担をする代わりに、その世帯も何等かのメリットを享受できる制度への改革などが考えられています。

今後、介護サービスを必要とし利用する人が拡大していくことは間違いありません。一朝一夕で解決できる問題ではないため、制度について話し合いの場が持たれています。

また、所得の格差は広がっており、どの世帯でも介護に十分な資金を用意できるわけではありません。このような背景を抱えている介護の問題は、日本全体において非常に重要なテーマであるといえます。

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